素人レンズ教室-その20
 
「レンズタイプ別 標準レンズの収差特性を学ぼう その2
 


麗子先生 : みなさん、おはよう。
はるか・ジロー : おはようございます。
麗子先生 : 今日は、前回の続きね。じゃあさっそくはるかちゃんがアレンジしてくれた「写真サロン-優秀レンズはどれか」のデータのf1.8-f2.0の描写を
         見ながら、ジローが前回まとめた各レンズタイプの収差特性と比べていってみましょう。
         はるかちゃんの表をもう一度載せますね。

 

ジロー   f1.8-f2.0のところね。
               おお、中心部はほとんどのレンズがなかなか良いレベルで揃っているぞ。
Zunowも大幅に改善してる。すごいな。
はるか : 球面収差は口径の3乗に比例だからね。前回の教室で出した「素人レンズ教室 その10」の「各収差とレンズ口径や光線角度などの関係図」、
      「質問4」のグラフのとおりね。

ジロー : 結構劇的だね。さて、全体を眺めると、、、、。おお、Summicronが登場して素晴らしい結果だ。
       中心部はほかにも良いレンズがあるけど、
Summicronは周辺部に行ってもほとんど描写が変化していない。これは優秀だね。
       
Canonのf1.8のレンズもいいね。最周辺部で少し画像が崩れているようだけど、それ以外はSummicron以上と言ってもよいかもしれない。
はるか : 面白いのは、開放がf1.1-1.5のレンズをf2.0に絞ったものよりも、もともとf1.8-2.0で設計されているレンズのほうが全般的に周辺部の成績が
       良いことね。
ジロー : そうだね。同じゾナー型でも、もともとf2.0クラスのほうが、周辺部の非点収差らしい楕円がないね。どうしてだろう。
はるか : ゾナーは元来f2.0以上の大口径には課題があったので、f2.0レンズのほうが設計に無理がないことと、球面収差と違って非点収差や像面湾曲は
       口径の変化に対して1乗でしか変化しないことも関係あるのかもしれなわね。

ジロー : こうやって見ると、f2.0レンズってみんな優秀だね。
       この図を見ていると、やはりオールドレンズの描写の味を楽しむには、周辺1/3部分の描写がないと面白くないということがよくわかるな。
はるか : 本当にそうね。やっぱり35mm用オールドレンズにはフルサイズカメラが必要なのね。

麗子先生 : そうすると、この本の実例を参照しても、いままでみんなが勉強してきた考え方とあまり大きな違いはなさそうね。

ジロー : ふむふむ。
はるか  :なに偉ぶっているのよ。


麗子先生 : じゃあ、少し飛んで今度はf5.6で見てみましょう。今度はジローが本のデータをアレンジしてみて。
ジロー : ほーい。おいらは作業は早いんだ。

・・・・・・・・

ジロー : はいできた。
はるか : あら、ほんとに早いわねえ。


 

はるか : たくさん登場してきたわね。

ジロー : これはまた面白い。全体を遠くからみると特徴がよくわかるよ。
           
Zunowを除くと、開放f値がf1.2-f2.0のレンズは「全てのレンズ」がf5.6では素晴らしく繊細に、よく写るレンズになっている。
           一方で、開放f値がf2.8-f3.5のレンズはf5.6に絞っても周辺部にはまだ課題が残っている。どう?
はるか : 確かにジローの言うとおりね。
ジロー : 「絞りはすべてを解決する」か。これ僕の格言にしよう。

はるか : でもどうしてかしら?

麗子先生 : レンズ構成の形が、大口径レンズはゾナーかダブルガウス、f2.8以下のレンズはテッサーかトリプレットというところにヒントがありそうね。
はるか : そうか。やはりテッサーやトリプレットというのは、このような35mmカメラ用の小型の単焦点レンズでf2.8やf3.5にするのは、それなりに「無理して」
             いるのね。
             もともとは、中判・大判カメラ用の焦点距離の長いレンズを基本に作られてきているので、35mmカメラ用に設計すると光線の角度や、
            各レンズ群の空気間隔など少レンズ枚数構成の非対称型として独特の難しい面があるに違いないわ。

ジロー : だから中央部は「きりり」と締まっているのに、周辺部分で急速に悪くなるのか。
            確かに、この時代の少し後の一眼レフ用のテッサーの評価にも、35mmレンズや50mmレンズなどの標準・広角系だと周辺部に「ぐるぐる」が出る
            というレポートも見たことがあるよ。
はるか : 自信ないけど、、。

ジロー : でもテッサー型でも周辺部まで円が小さくて解像力の良いレンズもあるね。
           
Canonのf2.8とか、Hexarのf2.8(ダイナー型)、Tominorのf2.8(?)、Takumarのf3.5などがそうだ。
はるか : 本当ね。
麗子先生 : 基本的には35mmカメラ用であっても、f5.6まで絞れば、周辺部でもかなりシャープな画像が得られると思うわ。
                ただ、留意が必要なのは、f2.8以下のこのあたりのレンズは廉価版のカメラに固着式のものも多いので、そのカメラのフィルム平面性や、
                レンズシャッターの位置などの影響を受けているものもあるかもしれないということと、やはり、ライカマウント用に作られた高級レンズとは
               使用素材や個体差の多寡も異なっているということでしょう。
ジロー : でも、正直いうと、僕は周辺まで円が小さいキリリ系のレンズよりは、周辺で縦長楕円になっているようなレンズのほうが好きなんだ。
はるか : 実は私も、、、、。

ジロー : だから、まだ見たことはないけど、このテッサー系の評価を見ると、一番使ってみたくなるのは、「Ezumar」レンズだな。
            もし、この評価の通りに写ったらどんな写真が撮れるのか、とてもわくわくするよ。

麗子先生 : 本当にこのレンズ教室の生徒は天邪鬼が多いわね。
                まあいいわ。そういう人もいなければ、みんな新しいレンズが出るたびに買い替えなくてはいけなくなるからね。
                じゃあ、今日はここまでにしましょう。







(参考文献 玄光社 写真サロン 優秀レンズはどれか 1956年臨時増刊)
 
 
 
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